インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは本当に効果があるのか?
「ワクチンを打ったのに、インフルエンザにかかってしまいました」。診察室でよく伺う言葉です。接種していても学級閉鎖が起これば、「本当に効果があるの?」と疑問に思われるのも自然なことです。
インフルエンザワクチンは、感染や発症を完全に防ぐものではありません。しかし、発症する可能性を下げ、入院が必要になるような重い経過を減らす効果があります。その年に流行するウイルスや年齢などによって効果は変わるため、「接種したのにかかった」ことだけで、無意味だったとはいえません。
ワクチンは、体にウイルスの特徴を覚えさせ、病気に備える働きをします。過去に感染や接種を経験した人には免疫の「復習」、初めての赤ちゃんには「予習」の役割もある、と考えると分かりやすいでしょう。
注射のワクチンは生後6か月から接種でき、日本小児科学会も接種を推奨しています。6~11か月の赤ちゃんだけに限った効果のデータは十分ではありませんが、「まだ感染したことがないから効かない」というわけではありません。保育園やきょうだい、持病などの状況も含めてご相談ください。生後6か月未満は接種対象ではなく、ご家族の接種や手洗い・換気など、周囲の対策が大切です。
私は研修医時代、インフルエンザ脳症のお子さんの治療に携わり、残念ながら救えなかった命もあります。昨日まで元気だったお子さんの状態が急変する。そのつらさは、今も忘れられません。当時のことは、坂下ひろこさんの著書『小さないのちとの約束―小児・救急医療の充実を求めて』(コモンズ)にも記されています。
ワクチンですべての重い合併症を防げるわけではありません。それでも、子どもたちを守るためにできる備えを大切にしたいと思っています。効果も限界もお伝えしながら、お子さんに合った予防を一緒に考えていきましょう。
監修者情報
たいちこどもクリニック
院長 伊藤 太一
医学博士、日本小児科学会専門医をはじめアレルギーや抗加齢医学の専門医資格を持つ。関西医科大学医学部卒業後、国内外の小児医療センターや病院で豊富な臨床経験を積み、令和2年に「たいちこどもクリニック」を開院。